初めての彼女
初めての彼女は彼氏と別れたばかりの女の子でした。
まだ、キスの仕方どころか手の繋ぎ方すら、知らなかったけれど、一緒にいるだけで楽しかったんです。一ヶ月目、二ヶ月目...と付き合った日には必ずデートをするようにしました。記念日だからと特別なことをすることではなく、ただただ一緒にいて他愛もない話に笑顔と笑顔がぶつかり合って愛し合った日々でした。
数ヶ月が過ぎたころに彼女の家に行きました。彼女の部屋にあったカレンダーの
今日の日付にはハートマークが付いていました。彼女は2人の記念日にはハートマークで
つけるということは知っていましたので、彼女に「今日って、何の日だっけ?」と尋ねました。
すると、一瞬空気がとまった後に彼女が少し戸惑った感じで「前の彼氏の誕生日なの」と、
取り繕ったような笑顔を見せて答えてくれました。逆に、僕にとってはその笑顔がはがゆく
「あぁ...」と返事したきり黙りこんでしまいました。
確かに前の彼氏との思い出には敵わないかもしれません。彼女のことが好きという気持ちは、誰にも負けないくらいつもりでした。しかし、3年という月日には程遠く、初めての僕には彼女の思い出や経験がまぶしすぎたんです。
心が通い合えないやりとりを繰り返すばかりで、月日とともに2人のすれ違いと
僕のはがゆさが積もっていきました。
今なら分かりますが、一緒にいるだけで良かったのが、月日が経つと自分の想いを相手に
押しつけたくなるものです。
しかも、彼女の中には前の彼氏の影があって、今はまだ僕よりも大きな存在なのだろうと
思いました。
そこで、日夜考え抜いて僕は彼女と距離を置くことにしました。彼女の心の中にいる前の彼氏の影がなくなまで会わないでおこうと2人で決めました。そして、彼女の中に前の彼氏の影がなくなった時に、また会おうと約束しました。
それが明日でも5年後でも、僕はいつまでも彼女を待ち続けようと思いました。
それから春夏秋冬が僕の目の前を過ぎて行きました。
僕は2人離れていても心の赤い糸で繋がっていると思っていました。
ふとした瞬間、瞬間に彼女の仕草や発言がまぶたの裏をよぎっていったからです。
しかし、不安も日に日に大きくなります。彼女を想うあまり、もう2人は会えないのではないだろうか、いっそ会わないでおく方が彼女にとって良いのではないかと思いました。
そんな時にカバンの中に見知らぬ手紙が入っていました。
恐る恐る封を開けてみると、そこには見慣れた文字が並んでいました。僕は文章を読む前に涙が溢れとまりませんでした。そこには嘘偽りない彼女の文字が並んでいました。彼女の気持ちや想いが詰まったその手紙の最後には「会ってくれますか?」でした。
その言葉で、僕の涙は再び溢れて手紙を染めていきました。
待ち合わせは、あの日あの時のいつもの場所でで、迎えに行けば小さく映る彼女の影が鮮明に見えました。彼女は僕の姿を見つけるとともに、溢れる涙で頬を濡らしました。僕も溢れてきそうな涙をこらえて、ごまかす様にそっと彼女を抱きしめました。
おそらく彼女のカレンダーの今日の日付にはハートマークが付いていたことでしょう。
そう、今日は一年目の記念日でした。僕らの心の赤い糸は繋がっていたのです。
僕らはそこから愛されることばかりを望まずに、お互いを信じて歩いていこうと決めました。
僕は、彼女のことを決して離さずに、彼女の心の真横に僕がいることを信じて歩もうと
決めました。そして、紡ぎ合わせた2人の赤い糸が解けぬほどに、ずっと彼女を抱きしめていたいと思いました。
